フィギュアの各パーツの重なりが多かったので、その部分を考えながら製作を行うのが少し大変でしたが、楽しかったです。
今回は、こちらのカルネアさんをフィギュアとして製作させていただきました。
腰を掛けたポーズでの製作をご希望でしたので、椅子のデザインとしてウイングバックチェアを提案させていただきました。
早速ですが、今回製作したフィギュアの全体をご覧ください。
今回のフィギュアはモデリングも大変でしたが、分割も大変でした。^^;
フィギュアの3Dモデリングや塗装に関しては、ネットや書籍なども含め、いろんな情報が溢れていますが、分割に関しては、基本的な方法以外にあまり情報が見受けられません。
少し複雑な構成のフィギュアを製作して分割しようとすると、初心者の方は悩んでしまうかもしれませんね。
分割作業自体が比較的、地味な作業なのでしょうがないのかもしれませんが、分割によって、それ以降の作業の捗り方が全く違ってきますので、造形師さんや原型師さんの腕の見せどころといった感じでしょうか。
ということで、今回の分割について、まとめておきたいと思います。
大量生産品などの一般商品の場合は、生産・組み立てが簡単にできることを重要視してデザインや分割等を行いますが、エモデザでは、全く無視しています。
今回もですが、キャラクターのイメージや雰囲気、ポーズを最優先で製作したので、分割が非常に難しくなってしまいました。(自業自得^^;)
分割作業はモデリングに比べれば作業時間は短いですが、思考以外が停止するくらい熟考する場合もあるので、挑戦する方は集中力を持って臨みましょう。
ちなみに、一般商品の分割に興味のある方には、全く役に立たないと思いますので、その場合は、生産・組み立てしやすいように最初からデザインを分割重視で検討してください。^^;
基本的に、完成したフィギュアの下のパーツから分割していくようにしています。
分割をする際は1パーツのダボ(凹凸)の向きだけでなく、全体の形状なども考慮しながら行う必要があります。
今回のフィギュアの場合は、まずはブーツ・スラックス・スカートの3パーツだけで構成を考えていきます。
ブーツには、シンプルな凹ダボ。
スラックスには、これまたシンプルな凸ダボを作りました。
スラックスの一部がブーツの上部に隠れるので、この場合は、ブーツ側に凹ダボを作るのが良いかと思います。
もし、ここに凸ダボを作ってしまうと、ブーツの履き口の凸とダボの凸が二重になって表面処理もしづらいですし、エアブラシ塗装を行う際に吹き返しやエアーの流れの乱れで、きれいに塗装出来ないので、できるだけ凸が重ならないようにしていきます。
次に、スラックスとスカートのダボですが、基本的にシンプルなので問題ありませんが、向きのみしっかりと全体を見ながら合わせることが必要です。
そして、スカートとベルトのバックル部分ですが、全てまとめて1パーツで構成しても良いのですが、ここもデザイン最優先で製作したので、塗装をしやすいようにそれぞれ別パーツにしました。
基本的には、上のような感じで全部のパーツのダボを作っていきます。
ちなみに、今回のフィギュアの分割作業で難しかった部分は以下の部分です。
では、それぞれ解説していきたいと思います。
ダボの形状的に一番複雑になってしまったのが、この袖部分です。
肘掛けに掛かっている袖の先部分には、袖先が広がっているイメージが欲しかったので、若干逆テーパーが掛かっています。
また、椅子の肘掛け部分はシンプルな円柱状では無く、肘掛けの中央部分が少し膨らんでいる形です。(簡単に言うと、提灯を横にしたイメージに近いです。)
まずは、袖先を除いた部分について考えました。
椅子に両袖部分をはめ込む場合、方向的には上から真下に差し込むしかありません。
上面から見て、接続面がほぼ見えている状態なので、問題無いのですが、できるだけ平面で構成している方が接続の際の精度が上がるので、まずはダボを設置するための土台づくりをしていきます。
袖先の凹みと逆テーパーが混ざっている部分については、検討した結果、右袖は逆テーパーが無いので、左袖の逆テーパーをはめ込む際の遊びに使いたいので、できるだけその他の凹み部分を平面にしました。
杖の蛇部分は、一匹づつ別パーツにしようかと思ったのですが、スパイラル部分の角度がそれぞれ異なり、物理的に1パーツに組み合わせることが出来ないと思うので、最初から1パーツに結合しました。
この部分は、表面処理が非常に難しいかと思いますが、コツコツするのは嫌いじゃないので、地道にガンバりたいと思います。(^^)
杖を持った左手首は腕部分とマグネットで接続する予定です。
杖の一部に金属パーツを使っているので、支える部分にはできるだけ強度を持たせたいと思います。(心配性なので...。^^;)
強度を上げるため、肩部分と手首部分で袖にダボを付けて、強度を上げます。
左手首の凸ダボの幅は左腕のパーツの厚みと接続用マグネットのサイズを考慮して、限界ギリギリまで大きくしました。
椅子の原型データはこんな感じです。
細かいパーツはすでに結合しているので、分割作業で使用するパーツは全部で9個です。
各パーツ毎での分割が理想ですが、実際の椅子はそれぞれの部分をリベットでくっ付けていて、はっきりとした真っ直ぐな境界線がある訳ではないので、ある程度まとめる必要があります。
また、椅子とフィギュア本体との接続は、肘掛け部分で左右の位置の調整をして、お尻部分で高さの調整をして、更に上着とフードで奥行きの位置を合わせる必要があります。
これらを考慮して、椅子の分割位置を考えないといけません。
上着と袖(左右)はそれぞれ別パーツで出力後、組み立てる予定です。
この場合、更に椅子の肘掛けを左右それぞれ別パーツで出力し組み立てることを考えると、位置合わせが非常に難しくなると思いました。
一般的な場合でも組み合わせパーツは、コンマ数ミリ以下で組み立てないと、見た目に違和感が出てしまいます。
ですので、椅子の肘掛け部分は組み立てを行わない様に、出力前に1パーツに結合することにしました。
また、椅子の脚部分は最初、別パーツにしようかと考えていたのですが、その場合、組み立てた時に、少しでもぐらつく可能性があるので、
接地面で安定性が第一なので、椅子の土台部分と結合しました。
地面には左ブーツと椅子の脚の底が面イチで接する様に造形しています。
フィギュア本体のお尻部分とソファーの接続する部分の位置合わせも精度を高くしないと、地面に接する左ブーツの底面が合わないようになってしまいます。
よって、この部分も組み立てを行わないように、椅子と同じパーツに結合することにしました。
上着とフードは椅子の背もたれだけでなく、背もたれに掛けているドクターコートの上にも接地しているので、そのパーツとの組み合わせも考える必要があります。
このドクターコートも分割の事だけを考えれば、背もたれに掛かっている位置をもう少し中央寄りにして、形も少し変形させて、フード部分で途切れる様にすれば良かったのかと思います。
ただ、背もたれの真ん中にコートを掛けると、真面目な印象を受けるので、キャラクターの性格的に少し違う感じがしました。
コートは背もたれの端の方に掛かっている方が、キャラクターの雰囲気に合っていて、見た目にもカッコいいかなと思い優先した結果です。
結果的に、分割方法が難しくなりましたが、良いんです。見た目重視です。(^^)
理想で言えば、椅子パーツをすべて組み上げてから、フィギュア本体を上から差し込んで完成させたかったのですが、上着・フードと背もたれの接続面にどうしても逆テーパーが入ってしまうので、椅子の土台部分にフィギュア本体を乗せてから背もたれパーツを後ろから差し込む形で組み上げようと思います。
まずは、下が完成したフィギュア3Dデータです。
3Dプリント出来る様にすべてをパーツ分けしました。
分割するとフィギュアのパーツ構成はこんな感じです。
以下、組み立てた手順です。
※1.左肩部分のダボと手首部分のダボは平行に追加しないとはまらないので、少し差し込んで、少し回転させて、手首のダボにはめ込む。
※2.右腕の差し込み方向に注意する。
右袖と右腕はスカートと接していて、接地する面が両サイドからテーパーが掛かっている。
真上からはめ込むには逆テーパー、真横からはめ込むにも逆テーパーが掛かっているので、斜め後ろからはめ込む事で解決させる。
方法は、親指の先を首元の襟の内側に少し入れて、そこを支点に少し回転させて、後ろに振って、斜め後ろからはめ込む様にして接続する。
以上で組み立ては完了。
最後の方は個人的な備忘録になってしまいましたが、こんな感じでフィギュアを組み立てました。